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1984
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2018.04.27 Friday 10:55『1984』@新国立劇場小劇場。終演後、呆然として言葉が出ない。頭の中をぐちゃぐちゃにされる。それなら僕たちはどうすれば良いというのか。という。絶望的な思い。やり場のないモヤモヤ。ののちにふと。「ああ。どうすれば良いのか考え続ければいいんだ」と、導かれる。終演後の永遠にも似た1分間。どうすれば良いのかと考えている自分に、この作品の意義を感じる。人間は簡単に考えることをサボってしまうから、踏みとどまろうとした誰かが演劇を始めたのかな、と、そんな事を思う。
「考えさせられる良い作品」じゃ済まされない。演劇を使って、演劇の枠を飛び越えて社会に、日常に還される。バリー・タークもTake me out もそうだった。こんな作品がもっともっと観たいし、創りたい。こういう作品が、3ヶ月でも半年でも上演を続けていられるようになってはじめて、演劇は演劇のためのものではなく、そこに暮らす全員のためのものになる。ファンも「全通しなきゃいけない天国のような地獄」から解放される。実際それを煽っているのはこちら側という無限地獄。こういうのは、ユーチューバーやニコニコ、ボカロ世代にも観て欲しい。観て感じた事を教えて欲しい。広く繋がれないなら演劇は滅びたらいい。額縁に入れられた高級趣味の演劇から、まずはこちらが出なきゃいけない。僕たちが「ファンによる前売り即日完売」を目指す限り、そんな日は一生来ない。もう一度言う。これは別に誰のせいでもないんだ。でもそれは裏を返せば僕たち全員の責任だということ。
補足でつまらない話をすると、小川絵梨子さんの装置を駆使したトリッキーな空間の演出に唸った。実は真骨頂じゃないかなと思った。戯曲が持つ不気味さや温度、不信や不安、時間の歪み、空間のズレ、他あらゆる要素を100%以上に引き出していたんじゃないか。役者ファーストだけじゃない、演出小川絵梨子さんの奇術師たる側面が存分に発揮されて、結果、戯曲の世界に引きずり込まれる。役者や装置を目で追うのではなく、内容に脳みそが釘付けになる。それが出来る役者も凄い。役者の技術の中でこれが一番凄いし大変なことなんだということにいい加減みんな気づいて欲しい。こういう仕事をこそ尊敬してあげて欲しい。という職業贔屓。そうなるとあとは舞台上は魔法のオンパレードだった。舞台上が1つの脳みそになって客席を飲み込んでいた。息が出来ない。絵梨子さん。凄かったっす。 -
Take Me Out 2018
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2018.04.25 Wednesday 22:57夏に一人芝居をやる劇場、青山DDDクロスシアターで。『Take Me Out 2018』。初演は未見。
何でそんなに翻訳劇をやるの?という質問への1つの答えに、昔から、「日本には若者目線できちんと現代の社会について考える演劇作品が少ないから」というのがあって、今までは何いってんの、そんなことないし、あるし、と思って来たけど、これを観ちゃうと、口をつぐむ他ない。日本では「社会についてものを言う」態度と、「人を楽しませる演劇」とがこれほど溶け合うことはない。そこには、「考える」も「感じる」も両方あって、そもそもそんなもん2つで1つなんだという当たり前の事を思い出させてくれる。僕たちは病的に「考える」と「感じる」を分けて使うが、出口は「同時にやる」ことにある。そして、演劇という行為がつまり「同時にやる」ことなのだ。その時大事なことは、「平易な言葉で考えて」「我が事として感じる」。俳優、演出、全スタッフのそこへ向かう努力が見事に結実していた。
僕が感想書くと、どうしてもこんな感じになっちゃいますけど、つまりそんな素晴らしい作品でした。
こうやって、僕たちの社会を網羅的に語る事が出来る、そしてそれを当事者として実感する事が出来るのは、演劇に許された確かな力だなと、上質な娯楽だなと、改めて信じさせて貰えた。
5/1まで。青山DDDクロスシアター。当日券あるようです。民主主義につまづいた事のある人なら誰にでも分かる話。つまづいてる事に気づいてないひとには、自分のストレスの理由がちょっと整理される話。ストレスがないひとには、なんだかちょっと感動出来る話。 -
バリー・ターク
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2018.04.24 Tuesday 02:38KAAT大スタジオで。相変わらず関東でも指折りの素晴らしいブラックボックス。客席数も最適。濃密で親密で逃げ場がない。大劇場でかけてしまっては台無しになる作品というものがある。今日のはまさにそれ。このキャストでこの演目をこの空間で。公共劇場の気概と良心を見せて貰ったような気がして胸が熱い。
バリー・ターク
by エンダ・ウォルシュ
アイルランドだった。自分の国のことをこんな風に表現出来るなんて、なんというかその知性も感性も、歴史の重さも、言葉を失う。で、あらためて知らされるその深刻さに、息が出来なかった。もちろん、意味をかえてどんな世界にも置き換えて観れるんだろうし観て欲しいんだろうけど、それもこれも、まず、「あの国で、このお話」だからこそ産まれる強度がないと成り立たない。ファンタジーこそ、根っこには直視出来ないリアリティーが必要なんだと、あらためて。で、その強度をバシバシ感じられたという事は、翻訳で、こんなに離れた国で。すごいなー。製作チームの本気を感じた。惜しむらくはもっと色んな種類のお客さんが観れたらいいのに。これはもう誰のせいでもない。席数に限りがあるが故の演劇のメリットと、それを巡ってタコツボ化すること。或いはそれを避けて極端に市場から離れること。そのどちらかになってしまうのは何なのか。良いものが多様に受け取られるためにはどうするべきなのか。何をすれば良いのか。もう良く分からない。開かれた演劇、なんて夢のまた夢。見るけどね。夢。 -
メモ
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2018.04.18 Wednesday 23:36視野を広く持って全部を深めていこうとしても限界がある。隣の芝生の青さに惑わされないで、狭く深く自分の専門を掘り進める。その内に、ある時ふと、視野が開けて世界が繋がる。そういう事がある。自分の専門を何度も問い直し、誰よりも良く考え続ける事が大切だ。好奇心を枯らさない事と興味散漫な事とは違う。自分の興味の出所をしっかりと掴まえておかないと後でとんでもない事になる。でもこればっかりは本当に難しい。
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香盤表
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2018.04.08 Sunday 01:38
夏の一人芝居に向けて、38人の香盤表を作ってみた。Excelが少し上手くなった。それだけ。えっとね。それだけ。 -
国文学研究資料館
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2018.04.03 Tuesday 01:39
立川にある国文学研究資料館で刺激的なワークショップをしてきました。日本の古典籍。翻訳劇と現代口語に頼りきりの僕たちが、一度きちんと触れるべき世界だなとあらためて。研究所の先生方の愛情溢れる翻訳のお陰で、知り得なかった世界の一角に足を踏み入れる事が出来ました。日本の現代演劇の分断を救う鍵は、やはりここにあるのではないかなと。一人じゃ何も出来ませんし何も知りませんでしたが、この機会にまた新たな手掛かりが掴めそうな気がします。中長期的な視野で展開していきそうなプロジェクトなので、また随時ご報告します。
ちなみにネタバレしますとこんなプロジェクトです。
http://www.nijl.ac.jp/pages/nijl/about/index.html
ご興味のある方はお訪ね下さいませ。
ちなみにこの資料館は一般の方でも入れます閲覧も出来ます。読めずとも、草双紙、是非一度お手にとって見て下さい。 - ←back 1/1 pages next→